2017/10/14 性病
当ブログでは前回「九州地方でHIV患者が増加中」という記事を書きました。
しかし、丁度同じ頃、海外ではHIVやエイズの完全撲滅に繋がるニュースが発表されました。
アメリカの国立衛生研究所(NIH)が発表したものによると、以前からハーバード大学やマサチューセッツ工科大学、フランスの製薬会社のサノフィらと共同で研究に取り組んでいた「新しいHIV抗体」の開発に成功したということです。
ここで、「HIV」と「エイズ」の違いについておさらいです。
「HIV」とは「ヒト免疫不全ウイルス」と言う名のウィルスのことです。
「エイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)」は、HIVに感染したことで発症する症状を指します。
さて、今回話題になっている「抗体」とは、なんでしょう。
「抗体」とは、人間が元から持っている防御機能のことです。
ウィルスに感染すると、人間の身体はそのウィルスに対抗するために「抗体」を作り出します。
例えば「水疱瘡」や「おたふくかぜ」もウィルスによる病気ですが、これらの病気にかかれば「抗体」ができます。
「抗体」ができると、その効果が続く間は同じウィルスには感染しません。
インフルエンザのワクチンも「抗体」を事前に作って、感染を防ぐために接種するものです。
現在行われているHIV検査の一つに、「HIV抗体検査」というものがありますが、これはHIVに感染したことで体内で作られる抗体の有無を調べるものです。
以前から、この「HIV抗体」によってエイズ撲滅が可能と考えられ、様々な研究が行なわれてきました。
しかし、ここに問題もありました。
ウィルスは同じ種類のウィルスでも、系統が違うと抗体が効かないことがあるのです。
ウィルスの系統の違いを“株の違い”とも呼びます。
例えば、インフルエンザも複数の“株”に分かれているので、接種したワクチンで作られた抗体以外のインフルエンザ株には感染してしまいます。
しかも、HIVには200種以上もの株があるとされ、特定の抗体による治療や感染予防の効果が上がらないことが、長い間の課題でした。
今回の研究で、HIVに感染してもエイズを発症しなかった人たちから、数種の抗体を採取・調査した結果、複数の株に対抗できる抗体が発見されました。
それらを、サノフィ社の持つ独自の「遺伝子組換え技術」で、抗体の特性を損なうことなく組み合わせることで、全く新しい抗体を作り出すことに成功したそうです。
この“新抗体”は、非常に多くのHIV株に効果が認められ、サルを使った実験では、実に99%ものHIV株を駆除できることが確認されたとのことです。
研究はかなり進んでいて、早ければ来年2018年には、人への臨床試験を開始する予定だそうです。
近い将来、HIVはインフルエンザよりも“確実な予防法や治療薬が手に入る病気”になる日が来るかもしれません。
世界中が期待しているこの研究、今後の発表にも注目したいニュースです。
記事監修 新宿形成外科院長 岡 和樹
https://www.s-keisei.jp/shinjukukeisei/index.html